知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

奴隷という視点から国を考える話

 クルドのことやロヒンギャのことは、簡単なことではないのですが、国を持ちたいという思いを奴隷という視点から考えてみたいのです。今日の日本では、奴隷というとアメリカの黒人奴隷のこととしか学校では学ぶ機会がないので、日本にも古代から奴隷はいたということやヨーロッパもイスラム圏も奴隷が一つの価値ある商品だった時代かずっと長かったことを学ぶことはありません。さらにアメリカの南北戦争で黒人奴隷解放が高く掲げられたのは人種差別に起因すると学ぶのは本当は適切ではなくて、白人も奴隷として売買されていたし、戦争だけでなく、略奪や誘拐・拉致などで民族そのものが奴隷として売買されていたことを知ってもらいたいと思うのです。アメリカの奴隷は、初めから黒人ではなく、インディオや白人を導入しただけでは労働力が不足し、さらに南部の気候に適応せず死亡が多かったために気候に適したアフリカの黒人を連れてきたということなど、決して人種差別一点で進んだことではありません。人間は労働力として長く、年季奉公の様な奴隷と変わらない期間契約労働だけでなく、奴隷として所有することが認められていた時代を持ち、今でも世界にはまだまだ根絶されたとは言えないのです。奴隷を必要とした社会は古代のギリシャを含めて、ヨーロッパでありイスラム社会でした。ギリシャの奴隷は同じギリシャ人が多かったとも言われていますが、スレイブ(奴隷)の語源となったスラブ人は、国家が弱かったので、他民族の侵略や略奪を繰り返し受け、中世・近世と長く奴隷狩りの対象となっていたと言われています。その原因は、貿易という商品交換の対象だったからです。私たちは教科書などで、イタリアの都市国家は貿易で繁栄した等と習うのですが、貿易は、商品の交換が基本ですからお互いに同じものを持っていたのでは貿易は成り立ちません。双方が欠損していて欲しいものを交換するのですが、欧州の国家が欲しいものは、香料、絹、宝石など沢山ありましたが、欧州からはこれに匹敵するような物品はなかったのです。そこで、労働力としての奴隷を認め必要としていた、イスラムに販売していたということです。イスラムは、香料や絹を中国やインドから取り寄せることのできるいい地域だったし遊牧的生活では、運送手段を持っていて、商人としてシルクロードを活用していましたし、同一宗教内の奴隷を認めない教えの中でキリスト教徒は売買の対象として適切だったのです。それはキリスト教でも同じでしたが、欧州の他民族の中ではとにかく弱い民族は、簡単に侵略者の奴隷にされてしまったということです。そして、男はガレー船(昔の戦艦で地中海の制海権がかかっていた)の漕ぎ手や鉱山の人夫、農夫という労働力だけでなく、傭兵という戦力にも組み込まれています。女も、娼婦よりも、家内奴隷として家事をもっぱらやらされています。日本人には理解できない民族というくくりを言語系統で大きく分けただけでも、ゲルマン系、ラテン系、スラブ系、ケルト系、その他と分けられ、民族の攻防が延々と続き、その中で捕虜や誘拐があって人身売買も正当な商売とされていた時代があったということです。事例としてクリミア汗国では、ウクライナ人の村を襲って住人を奴隷にして売ることを生業としていたとも言われていますし、イギリス王が、3万人の牢獄者をアメリカに奴隷として売ったことがアイルランド奴隷貿易の始まりとも言われています。その後、アイルランドの囚人達は、海外在住のイギリス人入植者へ売られるようになり、イギリスは、このアイルランド奴隷貿易を100年以上にわたり続けたと言われています。それは、1798年アイルランド暴動後も、何千ものアイルランド人奴隷がアメリカやオーストラリアへ売られたとまで言われています。つまり、アメリカの黒人奴隷は、すでに行われていた欧州の奴隷売買の延長線上にあって決して人種差別問題だけの正義の戦いではないのです。白人とか黒人ではなく、国家を持てなかったり、軍事力が弱かったり、治安が安定していなかった地域の住民は、突然の襲撃ののちに奴隷として売買されることが国家間でも行われていたということです。それは日本も同様で、古代には、中国に人間が貢物となっていますし、戦国時代では、乱取りの一つとして住民を拉致して奴隷として売ることが広く盛んに行われていたのです。理由は、武将には報酬として占領地の分配がありますが、明確な報酬規程のない兵士には報酬代わりとしての乱捕りと言う金品を含めた略奪・拉致なんでも戦利品として自分たちの物とすることを了解していたからです。ですから、戦場の近くには、そんな商人たちが常に待機していたり随行していたのです。戦国時代の日本人奴隷は非常に有用で、女は売買婚の妻、男は傭兵として、東洋のポルトガル船や後期倭寇の戦闘員になったりもしています。ですから歴史上、最も古い職業は傭兵と娼婦、最も古い商品は奴隷などとも言われています。人間は有用で、国を持たないと自分を守れない時代が今もあるのです。ユダヤ人が立国した国を守ろうとするように、クルドやロヒンギャにとっても自らを守る為に立国しようとする意識は、日本人には理解できない深い希望だといえると思うのです。多民族国家として成立している国では、国内の民族対立や迫害がないと独立などとはならないのですが、民族として自分たちが守れないという危機感が強くなれば独立という要望が強くなるのかもしれません。今日のクルドなどの課題は、第二次世界大戦前後の植民地問題による線引き国家が問題とされてもいますが、たとえ自治が拡大されても、奴隷的生活を強いられたり、そのように感じる扱いを受ければ、民族はは独立へ向けて歩き出すのかもしれません。