知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

イナゴは食えてもコオロギは食えないの話  

 日本では、稲作の害虫であるイナゴが大発生しないように、子供たちが捕獲して佃煮にして食べるとか、柴刈り等の入会地での脅威となるスズメバチの駆除もかねて、蜂の子が食されていました。今日では、米などの穀物では摂りきれない栄養分を確保していたと昆虫食を説明することもありますが、当時は栄養なんて概念はありませんでしたから、そんなたいそうな事ではなく食べられるものは何でも食べただけだと思うのです。そして、その中で、気に入ったものが残っただけと思うのです。何故なら、簡単に取れる、コオロギ、トンボやカブトムシ、セミなど、飢饉の時には確実に試食していたのに、郷土食としても残っていないからです。栄養補給と考えていたのなら、カエルやトカゲなど食べるものは他にもありましたが常食に加えなかったことからも、栄養補給なんてことではなく空腹で食べていただけだと思うのです。栄養学が後付けで評価するほどの思えないのは、昆虫食が一般化していない事やウサギ、イノシシ、シカ、鳥など結構肉食をしていたことは判明しています。ただし、常食ではなく体力回復の滋養強壮としてだったとも言われています。つまり、人間は栄養の事を考えて行動しているのではなく、食べられるものは何でも食べてその上で常食の選別をしていると思うのです。先日の報道で「食用コオロギ会社倒産」と言う記事がありました。この会社は、「クリケットファーム」と言って、2021年に設立し、環境に配慮した次世代フード『コオロギパウダー』を配合した食品などを販売するとして、諏訪信用金庫および日本政策金融公庫より4100万円の協調融資を受けたベンチャー企業です。しかし、販売は伸びず倒産しました。今日ではSDGsなどと散々言われていますから、牛や豚によるたんぱく質確保より、昆虫食は食糧危機を救う貴重な食材であるにも関わらず、国民は関心を持たず営利事業として成り立たなかったという事です。昆虫食そのものは、13年に国連食糧農業機関(FAO)が食料問題の解決策に有効と報告書を発表し、15年の国連サミットで推奨され大いに取り上げられ広報されました。無印良品の「コオロギせんべい」が話題となりました。しかし、食糧危機に備えてという発想もありますが、だいたい危機に備えて食生活を変えるなんて人はいません。危機がやってきてこれしかないという段階まで人は簡単に今の食生活を変えません。例えば、肥満している人も、例えば糖尿病の人も、例えば肉好きな人も、何かのきっかけがなければ簡単に食生活を変えません。それほど食生活と言うものは個性と感性にあふれているものです。栄養学がどんなに力説しても、医師が警告したところで「わかつちゃいるけどやめられない」が食生活です。それだけに、SDGsごときで変わる人はもっと少ないと言えます。ただ、世界的には、昆虫食の市場が拡大しているようですから食料自給率の低い日本では否応なく食べなければならないときがやってくるかもしれません。では、なぜ、イナゴは食えてもコオロギは食えないのかという事です。和食の基本の色に「五味五色」があって「黒」「白」「赤」「黄」「青(緑)」の食材を指すのですが、黒の代表としては海苔、そして黒豆、黒米、黒ゴマ、ひじき、茄子と言ったところ、緑は、葉物を汲めて沢山あります。ではコオロギはと言うとこげ茶と言うより黒光り、一方イナゴは緑で、蜂の子は白ですから、極端な違いはありません。ただ、食えると言っても地域限定感は否めませんから、昆虫全体はどうかと考えてみると、はっきりしてきます。ゴキブリは、大嫌いどころか触るのさえおぞましいという感覚が日本には蔓延しています。そんな感覚の人がコオロギを見るなら、確実に、色とあの光具合からゴキブリの親せきとしか見えません。ゴキブリに対する、嫌悪感は、「汚い」に統一され、それが全体として昆虫は不衛生で触るものではないという事が浸透しています。当然ハエやカ、アリ・クモと言った身近にいる昆虫は、害虫しかいません。せいぜい、カブトムシを見るぐらいなら許容範囲としか言えません。汚いゴキブリと大人になるまでにしっかりと植え付けられた日本人にとって、昆虫は、総体として不衛生で汚いものと認識されています。その昆虫、ましてゴキブリと同様なコオロギを食べるというのは危機が来てこれしかないという時まで、食べたくない食材だと思うのです。