知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

研修請負会社は、受講者から手紙が来たら嫌ですかの話

  福祉のサービス管理責任者の研修を受講した後で、研修中も「自分の意見を言おう」とか「他者の意見を聞こう」とか「苦情の処理」とか「スーパーバイザー」なんてことを言っていたので、以下のような手紙を出してみました。返事はありませんし、届いたかもわかりませんので、言いっぱなしとなりました。ただ、悪人ほど正義を語るように、建前ばかり語る研修では実務者の質は上がらないし、やりっぱなしでフォローも出来ない研修を業務委託しているのは行政の責任放置と無駄遣いとしか思えないのです。

 

有限会社プログレ総合研究所

 令和5年度埼玉県サービス管理責任者等更新研修担当者様

    令和5年度埼玉県サービス管理責任者等更新研修      

    Dコース受講を終えて不適正と思われる演習教材に関する意見.

 

 私は、上記研修を受講しましたが、演習に於けるスーパーパビジョンの講義や動画によるロールプレー等に関して、サービス管理責任者の業務との関りでは教材が不適正と思われましたので僭越ながら意見を具申いたします。

 

 7月20日最終の演習に於いて、スーパーパビジョンが取り上げられ、事例として動画を視聴した上でロールプレーやグループワークが行われました。事例の内容に関してここでは詳細を省きますが、概要は職員会議で決定した支援事項が他の職員が実行していない事を職員がサービス管理責任者に訴え、サービス管理責任者が、スーパーバイザーとして対応すると言うものです。

 演習ですから一断面を切り取って行うので前後の関係に関しては問わず、主題はスーパーバイザーの機能を検討するものであると言うのが出題者の設定とは思いますが、支援と言うのは、常に本人の生活している背景を考慮して考察されるものです。ですから、スーパーバイザーの研修であれば尚更に背景の考察力や洞察力が問われて当然と考えます。更新研修のサービス管理責任者として、場面だけでとらえるのではなく、背景を含めて考察すべき演習でなければ、更新研修としての実践経験者のレベル向上にはならないと考えます。そのような深い視点で、提示された事例演習でなければ研修の質も低いものとなります。サービス管理責任者の更新研修で、スーパーパビジョンの演習教材の質が低い事は、講義された内容が机上の理想論で実践では役に立たない事を証明する事にもなり兼ねません。受講者がなるほど実践してみるべきだと思えるような教材研究が講師を含めて十分に吟味されていないと実務には適さない研修にしかならないと感じました。

以下にその理由を説明します。

 

1、サービス管理責任者が適正な業務を実施している内容となっていません。

 支援に関わる会議は、サービス管理責任者が主催したと思われますから、支援として会議で決められた対応に関して、周知徹底を図り現場関係職人に理解して頂くのは、サービス管理責任者の業務であるのに、それが実行されていない事でこの問題が発生している事が明らかです。

 支援の変更に関しては、一職員個人の課題ではなく、職員集団として受け止める関係づくりがサービス管理責任者の業務であるのに、周知されていない事が問題を発生させています。この設定ならば職員の発言は、他の職員批判ではなく、なぜサービス管理者として会議で決まった事を職員に周知徹底しないのかと問うべきものです。

 この様な不備が内部職員の悩みとされていますが、仮に利用者からの苦情であった場合は、支援の不備としてサービス管理責任が問われる内容である事が自覚されていません。

 

2、支援の統一性や方法手段の統一性は、支援サービス提供の基本です。

 職員が統一した支援を提供する事は、施設の絶対的基本です。その為に支援計画も作成するのですから、サービス管理責任者は、職員の個性を尊重した上で支援の一定の品質管理をする事が、本来の業務です。ですから、支援として会議まで招集して決めた事を、現場がどの様に実施しているか、変更は適正であるか、機能しているか検証するのは、サービス管理者の基本業務です。この研修は、サービス管理者の業務を研修するものなのに事例では業務をしていません。

 支援にばらつきがある事はサービス管理責任者が初めに気が付かなければならない事であるのに職員が悩み相談に来るまで放置していたことが、この問題発生の原因ですから、サービス管理者の業務怠慢が背景となってしまいます。

 この様な講習会では、モニタリングが注目されていますが、支援は実施後のフィードバックによる検証が日々行われていないと利用者に不利益をもたらすと言うのが講師を含めて理解されているとは思えません。

 

3、入所施設の夜間支援に関する困難性が全く理解されていません。

 会議の内容は紹介されていませんが、夜間のオムツを装着しないと言う討議時にスーパーバイザーとしてサービス管理者が適正な対応がなされたとは思われません。夜間支援についての認識があり適切な現場対応を行っていれば、この様なばこの問題は起きなかったと考えます。

 理由は、オムツをしない夜間支援では、夜尿起こしという対応が必要になります。しかし夜尿起こしは、非常に危険で、適正なマニュアルを作成し安全確保が必要となります。それは、、夜尿起こしでは、利用者の覚醒が確実ではなく、トイレ誘導での転倒などの危険や覚醒時のように便器を含めた器具の使用できないという事が発生します。その為、日常以上の見守りや、介護支援が必要になります。

 また、オムツを使用しているという事は、過去に夜尿が有ったからを前提としていますから、失禁を想定しなければなりません。失禁があった場合に時間的に経過するほど肌が荒れたりするのでセンサーを付けてでも即座に着替えが必要です。時にはシャワー浴による清潔も必要です。その為に、少ない職員がその為に張り付かなければならず、他者の支援に問題を及ぼすことも出てきます。

 つまり、この様な、夜間支援の在り方を会議で検討し、その対応や対策までサービス管理者が提示したり、チームを作ってマニュアルなどの再作成などをしているなら、実施のばらつきなどの職員による違いが発生する事はありません。夜間支援は、少ない職員で日中と同様の支援がどこまで可能かを考えなければなりませんから、夜間支援の内容変更時には、部分だけを決めるのではなく全体としての状況判断で変更しなければなりません。そして、それを周知徹底するためにマニュアルや要項を作成する事がサービス管理責任者には求められます。

 昼間とは違い、職員が手薄になるだけではなく、夜間はサービス管理責任者や管理者が現場を訪れて確認する事が困難で職員を信頼して任せなければならないだけに慎重な指示が必要ですし、適切な対応マニュアルなどの整備は、サービス管理者の義務でもあるのです。そうすれば今事例のような事態は発生しません。

 

4、夜勤と言う職員の不安に関してサービス管理者として認識できていません

 夜間にオムツをさせたくないと言う職員以上に、オムツを実施している職員も、オムツを嫌悪している心情をサービス管理者は認識しなければなりません。現実に働いてみるとわかりますが、夜間の業務は非常に忙しく、危険も多い事から職員は多くの不安を抱えて勤務しています。現実に入所施設の多くが夜間支援者の確保に苦労をしています。この様な中で、会議を主宰しながら、決定した支援に対しての経過観察だけでなく状況把握もしていない事は、業務怠慢としか言えません。

 事例の職員の悩みは、サービス管理責任者によって起こされたとしか言いようがありません。それがあたかも、相談に来た職員の日頃の言動と絡められて、一部には非があるような印象を与える提示内容となっており、適切なスーパーバイザーの演習に不適切であることは明快です。事例がなぜスーパービジョンの研修に使用される事になったのか甚だ疑問です。

 

5、夜間の睡眠支援は、入所施設の大きな難問でもある事が理解されていません

 事例のオムツ使用者が反論として睡眠をあげているように、睡眠支援は入所施設での大きな課題です。昼夜逆転の事例は強度行動障害では多数ありますし、重度の障害者の睡眠支援は非常に困難な課題として現実にあります。人権感覚だけに頼って感情的なオムツ外しだけで会議を進めると本来の睡眠支援という基本的支援に関しての職員理解が進まず、共有どころか、見えないところで各自が独自の方法での支援になってしまいます。

 チーム支援が基本の支援に関しては、職員の考え方を統一していくことが支援の基本ですから、サービス管理責任者は、この点での業務を日常的にしなければならないのにその痕跡が見られません。

 

6、組織対応の原則が理解されていません

 職員が「話があります」と上司等に言い出す時は決意した上で発言する言葉です。この様な働きかけは時には労務に関わる内容で、サービス管理責任者の人材育成とは異質なものがあります。労務に関わるような場合は、施設長や管理者等の関係で、整理されていなければなりません。

 つまり、組織対応の原則に基づいて対応しなければなりません。この原則で事例を考察するなら、これはサービス管理者の範疇である、支援の問題でも支援技能や理論の問題でもなく、会議や会議の在り方、周知の在り方、支援の統一性や職員の指示命令への徹底の在り方が問われています。しかし、当日のような提示では、受講者の中には単なる職員間のトラブル処理に関する検討にしか思われずスーパーバイザーの機能について混乱させるものになり兼ねません。

 事例に対する解釈の受講者による違いが、この職員とサービス管理責任者のスーパーバイズ演習に適正な焦点が絞れるとは到底思えません。この様な場合には、労務管理者としての施設長の対応が問われるべきで、該当する職員たちの職場関係などの修復は労務管理として行わなければ、結果として誰かが辞めるという事に発展しがちな事例でしかありません。

 基本は、職員の内部告発として捉えるなら、支援の不統一による利用者支援サービス不備ですし、会議の内容が家族に知らされていながら実施に不均等があったなら苦情として処理されるべき内容となります。

 同じ研修で苦情という事がありながら、苦情になるような事例でスーパービジョンを学ぶことは教材としてふさわしい事てはない事が明らかです。また、この様な支援の変更は、本人はもちろん家族に報告する事がサービス管理者の業務ですから、その実施状況を確認した家族からの報告であった時は、苦情処理が必要ですし、支援の不統一はヒャリハットの報告事例でもある事が、講師を含めて認識しているのか甚だ疑問です。一通りの講義ではなく現場での処理との関連が理解されていないと講師の質も問われるものとなります。

 

7、サービス管理責任者は、職員育成の義務はありますが苦情解決者ではありません

 この演習では、主題としてスーパーバイザーの機能が問われていますが、事例では、単なる職員間の不和に対してどのように関わるかがグループワークの話題になってしまいます。しかも、この様な事例では、「告げ口」と思慮されることもあり、サービス管理者が検討しなければならない、支援における問題解決の方法や技能に関しての演習には程遠いものとなってしまいます。

 何故なら、職員間には個性だけでなく、支援の技能に於いて格差が厳然と存在します。一方でサービス支援は公平で均等でなければなりません。勤務する職員による支援の質と量に差が出ることは戒められなければなりません。だから、サービス管理者が必要でもあるのです。

 人材育成の基本は支援の質と量を限りなく向上させることではなく、適正なレベルの支援が職員による格差なく提供される事が求められます。ですから、優秀な一人の職員がいる事よりも、普通の沢山の職員が必要でもあるのです。家族に担当職員や勤務職員に「当たり・はずれ」があると言われてはならないのです。

 事例のような職員間の支援に対しての不和が発生するのは、支援の統一性を疎かにしたサービス管理者の問題ですが、結果として職員間の対立構造的要素が見られた場合は、労務として取り扱うべきです。

 

8、サービス管理者の業務としてスーパーバイザーが演習では感じ取れない

 支援の不備は、サービス管理者が是正しなければなりません。一個人職員の不満にすることは責任転嫁だとも言えます。会議を主催したなら、誰もが実践できるようにスーパーバイズしなければなりませんし実行できる計画としてバックアップしなければなりません。職員間で支援をめぐり敵対感情や非難的発言が出るような環境を作らない事もサービス管理者の業務です。

 今回の事例には、上記のようなサービス管理者としての対応不備のある状態のままに、スーパーバイザーとして職員に向かうとするなら、無責任極まりないものです。

 訴えた職員が「会議で決めたのに」の責任は、サービス管理者にある事を自覚しなければなりません。チームとしての仕事をする上では、責任の所在と役割分担を明確にした上で、縦横の関係を織っていかないとチームは作れません。チーム作りを称賛する研修講義を行いながら、演習でチーム作りが困難な事例を教材とすることは、全体の構造に対して知見が行き届いていないと感じずにはいられません。

 

9、会議あって支援なし

 会議は、利用者支援の為に行うものです。会議で決めても実行されなければ無駄な時間以外の何物でもありません。時として会議では多くの職員は理想を語る職員に対して本音を言いません。しかし、その本音からしか実行力は出ない事を会議主催者は知り、スーパーバイザーが必要だと思います。

 この様な研修に長年対応し事業所でも実践しているからこそ講義や演習を行っているのでしょうが、福祉事業の現場支援は、対象者により天地の違いがあります。今回の研修でも児童しか対応していない方と成人の対応しかしていない方ではベースが大きく離れています。それだけに教材に関する工夫は重要であると考えます。

 相談支援関係の資料などが多く利用されていましたが、現場や制度に関しても精通していない相談の資料では現場の実態にそぐわないものも多くありました。更新研修なのですから、現場での実践者に向けた適切な研修内容の工夫が必要だと思います。相談支援とはサ ービス管理者は全く違う業務であることの理解が必要だと思いました。

 さらに労務として今日の労働問題としての超過勤務や勤務時間内のスーパービジョンの在り方が問われている時代に単なる講義だけでは現場に反映されません。労務をベースに一つでも現場に還元できる内容が組み込まれていないと研修も通過する情報の一つで終わってしまいます。

 

10、更新研修らしい研修を望みます

 実践者にとって有益な研修になるようにすべきと思います。

 国基準の内容を提示する事が基本でしょうが、現場で実践し、リーダー的活動をしている職員に対しての研修内容とも思えませんでした。

                        以上、意見といたします。    

                                            

令和5年度埼玉県サービス管理責任者等更新研修Dコース受講生

                 紫藤勇市   受講番号 SK0678