知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

物で釣る、ふるさと納税は、税金の割引制度でしかないの話

     地域支援として、ふるさと納税制度が始まって10年が過ぎようとしていますが、自治体間の寄付獲得競争が過熱したり、返礼品がネットショップ転売されたりと問題や課題が次々と出てきています。その原因は、ふるさと納税が、物で釣る事による損得勘定で運営されているからです。本来の目的である地域や地方の振興と言っても、零細企業もなく、返礼品製造会社もなく、農産業も廃れ、人の流失による衰退が続いている地域にとっては、ふるさと納税制度自体が活用できないし、都会からのお情け金で何とかなると言うものでもないからです。2021年度のふるさと納税の寄付総額が前年度比1・2倍の8302億円だったと発表されていますが、国が地方へ交付している約17兆円でさえ地域の衰退が止まらない経過からするなら、その成果も望むべきではないものです。しかも、ふるさと納税は、ふるさとを出てきた人達が思いを寄せると言う感傷的な事は微塵もなく、誰でもが利用できる制度として損得勘定全面で運営していますから、何の見返りも用意できないふるさとなど相手にもされないのです。この制度を利用している自治体も自治体で、損得勘定に訴えて利害丸出しで取り込もうとしていますから、経費も十分掛かって多くの利益など望めないのです。19年度の制度改正で、返礼品を金額にして寄付の3割以下の地場産品に限り、全経費は5割以下と定められているのですが、21年度の寄付に対する返礼額の割合は全体で約3割、全経費の割合は約5割という結果が出ていて正に上限いっぱいまで経費を掛けているという事です。これは、単純に考えても、本来の税額の半分しか収入になっていないという事の証明でもあります。トップだった、北海道紋別市は納付額が約140億円と言いながら実際手にできるのは費用を差し引いた約70億円です。紋別市にしてみれば、通常の税収入が30億円程度ですから約2倍の税収を稼いだことにはなり大成功という事になりますが、本来徴取できる自治体に普通に納税されていたなら140億円が税収になっているのでから、住民税としては半額になってしまっている事の方が大きな問題だと思うのです。つまり、2021年度のふるさと納税額が、8302億円であつてもその3割の税金で物品を購入して、その手数料として2割引かれて頂いた代金が、約4000億円となった税金が地方に配られたと言うだけの事なのです。しかもその3割引きの商品と交換できるのは、所得税との関りもあり複雑な計算もありますが、ふるさと納税として使用できるのは、納付する住民税の2割の範囲ですから、高額納税者ほど購入できると言えるのです。住民税をはらっていない貧困世帯は買えないということです。さらに返礼品を現金化すれば、マネーロンダリングの如く払った税金が戻ってくるということにもなるのです。この事は、結果として、多額の住民税を支払う裕福な層に対しての減税的役割を担ってしまっているとしか思えない状況だと言えるのです。ふるさと納税を、肯定する人たちは、都市部の人が地方に関心を持つ機会になると言いますが、この様な感覚自体が、都市部が上位と言う考え方で、都市部から田舎へのお情けのような感覚を高めているに過ぎません。田舎から都会へ出稼ぎに出てお金を持ち帰る時代もありましたし、親元へ都会から仕送りをすると言う時代もありましたが、このふるさと納税制度も豊かな都会から貧しい田舎にお金を恵む感覚がこびりついた制度でしかありません。確かに、経済的格差は、人口にも大きく影響を受け、文化的格差や生活の格差、そして価値観を含めた多様性や柔軟性にも格差が出ます。どんな幸せ論を論じても、経済的格差は絶対的に強い要素であることは間違いありません。貧しい地方を応援しようと言うもっともらしいこの制度は、実際は都市の中でも裕福で余裕のある納税者にとっての節税の手段に取り込まれているという事が問題として指摘されるべきだと思うのです。ふるさと納税制度は、地方の自治体を応援する趣旨で、返礼品による損得勘定で行うべきものではないと説明されていたのに、ネットを中心とした「大々的な損得勘定丸出し」返礼品競争を煽って広報してきたことで、2021年度の寄付件数は前年度1・3倍の4447万件で、いずれも過去最高を更新しています。この事実だけで利用者数が拡大し、寄付総額は16年度から5年で約3倍になったと騒いでいますが、本来の趣旨に戻ってまるまる金額が自治体に入る返礼品なしの体制にしたなら見向きもされない制度へ戻るだけだと思うのです。地方の課題の一つに、ローカル線が赤字で廃止されると言う事があります。交通網と言うのは移動手段で移動手段程地域の格差を今日では大きくしています。鉄道は人も運びますが運輸の幹線でもあります。人も物も移動に困難がある事が今日では一番の障害になってきています。ですから、ふるさと納税で助けるべきは、一つの町や村単位ではなく都市との距離感なく人も物が流通できるインフラの維持や整備に使用するべきだと思うのです。