知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

特例子会社は、特別支援学校の社会版の話

   世の中には、抜け道なるものが沢山あって不正じゃないけど正道から見れば邪道でしかないことが社会では堂々と認められている事は山ほどあります。その一つと言えるのが、特例子会社です。特例子会社と言うのは、会社の事業主が障害者のための一定の要件を満たす子会社を設立して、その子会社に雇用されている障害者を親会社や企業グループ全体で雇用されているとすることで、障害者雇用の法定雇用率をクリアーするには格好の抜け道そのものです。例えば、親会社、子会社含めて、1000人のグループ企業があったとして、今日の障害者法定雇用率は、2.3%ですから、23人雇用しなければなりませんから、特例子会社を作ってまとめて23人雇用すれば全体が障害雇用率を達成したことになると言う抜け道です。このメリットは非常に大きいと言えます。一番は、労働規約は会社ごとでいいのですから、給与や待遇福利厚生に至るまで全く別でも良いのです。親会社の正規社員が月給40万円でもこれに合わせる必要はなく、最賃の非常勤雇用でも成立するのです。勿論ボーナスなんかも全く違っていても問題はありません。二番は、設備投資が低額です。福祉施設とは違いますから設置基準などありません。人員に対しての基準も無茶苦茶緩くなっています。仮に一人一人がバラバラに配置されていたなら、車いすの人がいればその人の分ほど車いす対応のトイレや手すりを含めた設備改修費が必要ですが一か所にまとめてしまえますから余っている会社の余分なスペースに押し込める様に設置しても成り立つのです。指導できる職員の要請はありますが、基本は自立した労働者の扱いですから補助金で縛るようなことはありません。三番は、千人規模の会社にとって特例子会社の赤字は、連結会社としては税金対策ともなります。年収ベースで一人300万円として23人分は6900万円です。罰則金は、月額一人5万円ですから、23人でわ雇用しなかったとすれば1380万円払う事になりますから実質の出費は5520万円という事になります。千人の会社の人件費は、一般企業では、年収400万円でも40億です。最低賃金で雇用できるうえに福利厚生も別枠で良いのですから、後は、この特例子会社をどれだけ働かせるかで負担はさらに減るだけでなく、障害者雇用にも実に良く取り組んでいると言う評価まで得られるのです。現に、2021/09/07 労働新聞社によると、東急リバブルは、派遣子会社に障害者を集約し、人材派遣および販促支援業務を行う100%子会社・東急リバブルスタッフ㈱が、特例子会社の認定を受けたと意気揚々と発表しました。ここでも、グループ企業が個々に雇用していた障害者を、今後は東急リバブルスタッフ㈱で一括して雇用すると言うものです。販促支援の業務が何を指すかまでは記載されていませんが、特例子会社を持つ多くの会社では、それまで発注していた清掃などの雑務を特例子会社を立ち上げて障害者に振り向けています。そして、障害者は施設で働くよりはるかに高額で雇用されていると評価されているという事です。ここで考えなければならないのは、一つは障害者を集めて仕事をさせる方式は既に福祉事業としてあるという事です。そして、その福祉事業において非難されているのは、障害のある人も障害のない人も同じ場で生活する事に反しているという事です。学校教育では、障害の理解として障がい者と健常者の交流を制度として行わなければ、成長期に実は障害者は特別支援学校に分離されてしまっていて身近に接する事が無くなっているのです。大人になって職場に行って初めて障害者に接することになって驚くという事が現実なのです。ところが、この特例子会社方式が浸透するなら、正に障害者の隔離政策そのものなのです。もう一つは、障害施設があまりにも低賃金だという事です。就労A型は最低賃金でなければならないと言いながら、適用免除の制度があって最賃ではない賃金で働かされている障害者がいるのです。さらに、就労Bに至っては、労働者ともされていないのです。あくまでも訓練生で何十年働こうと労働者には成れないという事です。つまり、福祉施設での福祉的就労なんてことを厚労省が認めているから福祉施設の賃金は上らなくてもいい事になってしまっているのです。残念なことに、現状は、障がい者をまとめて低賃金で働かせるのが特例子会社で、障害者をまとめて労働者としての権利を認めていないのが福祉施設と言う構造になっているのです。成人の大人として仕事についたら労働者ですと認めさえすれば、福祉施設の意識は変わるし工賃は上がります。そして、特例子会社なる抜け道も不要になります。その原点は、障害がある人も障害がない人も同じ場面で生活し働くことだと思うのです。