知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

障がい者優先なら、ちゃんと書くべきだの話

 付加価値があることがいいとか、どうせなら多機能がいいということはどこにでもある発想です。専用よりも、いろいろ使える汎用の方がお得な感じもします。だから、いろいろなところで汎用できる多機能が薦められます。しかし、多機能は一見素晴らしいように見えますが持てる機能を十分に使えるかと言うと専用ほどにも活用できていないというのがほとんどです。例えばパソコン、実に多彩な機能を持っていますが、ほとんどの人はその本の一部しか使っていないのが現実です。ですから多機能と言っても、使用頻度などでは偏りが生ずることはよくあることで、何でこんな機能まで付けたのと非難され「シンプルイズベスト」などと言われることもあります。福祉では、障がい者と健常者と言う大枠がまずあります。さらに、障害者の中にも障害による分類があります。ですから、障がい者の枠の中で多機能と言うことと、障がい者も健常者もない多機能と言うことは大きく違います。障害に関わる人の考え方は、「バリアフリー障がい者のためではなく、障がい者が生活しやすいことは、健常者も生活しやすい」ことと考え、障がい者のために特別なものを求めているのではないと言っています。そんな理想と現実が、障がい者トイレの利用で、混乱を招いていると報道がありました。報道による内容は、障がい者用のトイレを健常者が使用して障がい者が使用できないことがあるというものです。

 障害者用トイレの本格整備が始まったのは1994年のハートビル法からで、日本では、初めは車いす専用的なイメージで設置され、使っているのを見たことが無いと言われるほど無駄な施設的感想が多いこともありました。それはトイレがないから外出できない障がい者も多かったので使用頻度も低かったという事情もあります。ところが、その後法律の変更による後押しもあって障がい者トイレは公共施設だけでなく大型商業施設などにも波及して設置が進みました。その過程で、多機能トイレとしての整備が進み、高齢者や乳幼児連れ、オストメイト設備や介護用の折り畳みベッド、ベビーチェアなどの設備だけでなく、利用法として高齢者の介助に複数人が入る事や性的少数者LGBT)が使うこともあると言われています。使用頻度が高まれば、回転率によって当然待たされると云う事態が発生するのは明らかです。さらに、健常者用トイレが混みあっていたとき障害があっても車椅子ではない人の出入りがあれば、使ってもいいのかなとと健常者が思っても不思議ではありません。さらに、名称も、「だれでもトイレ」「多目的トイレ」「みんなのトイレ」などと掲示されていることが多くなったからです。バリアフリーの理想から言えば障がい者も使える広いトイレであれば健常者も使いやすいということですから、車いすの人が待たされたとしても課題はないことになるはずです。ところが実際に設置している方は、名前を「だれでも」と言っていても実は、「通常のトイレ利用が難しい人は『だれでも』」と言う意味だったというのですが、そんなこと、誰もわかりません。さらに、専用や優先と言うと、利用者を区別することになり、ユニバーサルやバリアフリーの考え方と相いれないからとも言い、特別扱いは嫌だとも言うのですから、使用するときは待たずに使いたいや、長く待たされた挙句に健常者の様な人が出てきたというのは当たらないと思うのです。そして「電車の優先席と違い、個室のトイレは外から見えないだけに、疑心暗鬼の不満が鬱積しがちだ」と報道されたのですが、使い勝手が良ければ利用頻度が上がり「待たされる」と言う事が起きても仕方がないことだと思うのです。そうでないなら、誰にでもわかるように障がい者優先と言うべきです。かっこつけて理想を言うのもいいのですが、理想に現実が追いついていないときは現実に歩み寄って判断すべきことと思うのです。多機能トイレの整備が進み、障がい者が外出しやすい社会を目指す過程で、一部の人かもしれませんが健常者が使っていると苦情を言うのは当て外れの様な気がします。多機能トイレを使用した健常者が、健常者トイレもあんな風がいいと多機能トイレが増えることに賛成する方がいいと思うのです。他の座席が空いているのに電車バスの優先席を狙い目として敢て座っている人が現実にいます。抜け駆けとして健常者トイレが混んでいれば多機能トイレを敢て使用する人もいるでしょう。だからと言って待たされることに苦情を言って、健常者は使えないという暗黙のルールーマナーを作るなら、理念など言わずにはっきりと障がい者優先と言うべきです。専用にはしない、汎用にすると言って多機能にした挙句に、一部の使用者を排除するかの様な考え方は、本当は専用で優先権がある方がいいと言っているのと同じです。それは、健常者と障がい者を分離してそれぞれに必要なものを整備していくという考え方になっていきます。福祉祭りの様なイベントで、健常者に、車椅子試乗やアイマスクでの視覚障害体験を行うように、実体験で多機能トイレを使用してもらうことも必要だと思うのです。過去には誰が使うんだと非難されたトイレが、使用者が増え認識された来た事を喜び、もっと増やしてほしいという希望につなげるべきで、本来使用できる人が後回しになっているという非難は当たらないと、報道を見て、感じました。