知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

成年後見制度を利用すると施設に入れられるの話

    成年後見人を決めたのでもう安心だと思った人がこんなはずではなかったと後悔と苦情になりやすいのは、会ったこともない弁護士等が裁判所から指名された成年後見人ですと現れた初対面から案外始まります。成年後見人は、裁判所が指定しますから、身内にしてみれば期待しているのですが人物の当たり外れがあるだけでなく、制度と期待の誤差が大きいことにこの時になって気づくのです。なぜそんなことになるかというと、成年後見制度を推奨する法務省の広報が誤解を招くようなものだからなのです。もともと、成年後見制度は、平成12(2000)年4月1日、介護保険制度と同時にスタートしたように老人の資産管理を前提としたものですし、明治31年施行の「禁治産・準禁治産制度」の法律を廃止して改良型として制定されたという経過があるからです。禁治産などの制度は「判断能力が不十分な人の財産を管理する制度」で、そこでは、心神喪失者は「禁治産」とか、心神喪失者より症状の軽い、心神耗弱者は「準禁治産者」として、「禁治産者」には後見人、「準禁治産者」には保佐人が選任されました。ですから成年後見制度でも、「判断能力が不十分な人を保護する制度」として、知的・精神障がいや認知症等の精神的障がいが該当しますが、身体上の障がいのみで精神的障がいを有しない人は、対象外となっているのです。つまり、高齢社会、人権社会、世界的な社会福祉の推移に対応して初めから作ったものではなく、理念や考え方は、禁治産の財産管理が根底にあって、人権などというものではないのです。介護保険制度の運用が開始された時に、福祉サービスの提供方法が「措置」から「契約」へ変わるにあたり、契約を結ぶ際、本人の財産を使用する契約を結ぶとき都合がいいのが後見人制度ともなってもいたのです。ですから、現制度でも「欠格条項」と云って公務員になれないなどの条項が沢山付いているのです。若い障がい者が知らずに後見人制度を利用していると、努力しても公務員にはなれないのです。さらに、後見人になれるのは、身内だけでなく公正ということから、弁護士や行政書士社会福祉士などが成れるのですが、報酬も家庭裁判所が決めていて、障がい者の経済状態にも拠りますが、公には月額2万円から6万円程度と言われており、一人で10人以上持たなければ生計を賄うと言う事は困難です。それだけでは無く、成年後見人(法定後見人・任意後見人)等の辞任には家庭裁判所の許可が必要で、本人が病気などの正当な事由がなければ辞められないし、辞めさせられないのです。障がい者本人との人間関係に問題があろうと、申請した親族等からの解任請求があろうと、成年後見人に不正な行為や著しい不行跡などの余程の事が無い限り辞めさせられないのです。 

 ここで、大事なことは、成年後見制度は、禁治産から始まっていますから、一族・家族の資産管理と言うことが基本で、一人の人間の人権保護には始まっていないということです。にも関わらず判断能力が不十分な人の権利を擁護し、本人の意思を尊重しつつ、本人の財産管理と身上監護(=生活、療養看護に関する事務)を行う制度だなどと誤解するような事を宣伝するから、身上監護もするのだと申請者たちが思い込んでしまうことです。本当は、身上監護の事務をすると言っているだけなのです。この制度を利用しようとした人々は、財産もさることながら、障害や痴呆等になった人の生活という事が今日では大きいのです。しかし、生活介護の事など知りもしない弁護士が後見人になることにもなるのですから、揉めるのは当たり前なのです。障害の理解も無い、本人の生活歴の理解も無い人が、後見人になると本人の生活を維持するために本人の財産を使用すると言う事よりも、事務的が仕事だとして、生活の面倒は仕事では無いと、施設に入れたがるという結果になるのです。身上監護ならびに財産管理の二つが達成できる支援だと言って施設へ入居させるのです。まして、後見人の基本報酬は、被支援者の金融資産が多いほど、家族後見人よりも、専門職に就いている第三者の方が報酬が高くなる仕組みですから、施設入所させれば、、施設に金を払う事務手続きだけで数万円の報酬になると言う事になるのです。一度就任した法定後見人は悪い事でもしない限り解任されることはありませんから、本人が死ぬまで施設へ金を振り込む事務だけで収入を得られるという仕組みなのです。もし、本人が自宅で暮らしたいなどと言い出したなら、日々の生活用品の買い物のヘルパーやら支援サービスやらと細々な手続きや対応に手間と時間が掛かります。レシートの山も大変です。病院への対応も必要になります。でも、施設なら全て一括で済みます。NPO法人や一部の行政などがよりよいものとしようとしていますが、現実には、こんなはずじゃ無かったと思うような事態は増えているのです。成年後見制度が、障害を持つ人の人権と生活を守るためにあると云う誤解をしてはならないのです。