知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

組織ではなく人に未来を託せない行政の話

 或る都市の福祉行政として、福祉の活性化のために市内の様々な福祉団体の関係者を集めて、連合組織を、公的補助金までつけて半官半民のように設立しました。しかし、その組織は、行政の期待に反して障害の枠を超えた福祉のために燃え上がることもなく、参加した個々の団体はそれぞれの理念や会員の利益のためには頑張っても、連合体としての活動はお客様状態だったので、やがて、親睦会の域さえも失われ、参加者も減少してしまいました。ついには、組織を活用しているのは、補助金による身分と給与の保障を受けた職員だけだとの悪口さえも出てきました。市内に活動する福祉の団体や支援者たちの中から縦の行政では出来ない横の繋がりを構築して、福祉の柔らかい部分をケアしたいと、何人もの人がその志を実現しようと組織に飛び込んで努力したのですが、一時的に上向きになっても再びすぐに低下して、むしろ行政の職員よりも仕事の出来ない組織とまで陰口を言われてしまうことさえも発生しました。補助金は、職員の給与として消費され続け、設立した行政自体が何とかしなければならないと危機感を持つような状況とまでなってしまいました。行政職員は、福祉団体が横のつながりを堅固にすることをしなければ、障害者の経済的社会的自立のための賃金や工賃のアップを図ることは出来ないと、民間の施設を集めて新しい組織の構築を始めました。今度は、お金を出してお任せにするのではなく、市がバックアップしていると証明することで組織の活動を支えることとしました。福祉施設が販売会をしたいと言えば会場を借りるのに市が介在して信頼を持たせることで無償・格安にしたりすることや市の後援や共催という名を使用させることで市民への広報を行ったりしました。交渉時に市の職員が同行していることは、相手に対して相当の信頼に繋がり、様々なイベントや販売会が行われ売れるとなれば参加する施設も増えてきました。しかし、活動拠点どころか机一つ持たない組織で、すべてみんなの持ち寄りで行うには限界がありました。電話連絡も、メールも、世話人となる施設の間借りとなりますから正にやる気のある人が支えている時はいいのですがそんな人が抜けるともろに影響を受ける虚弱な組織体でした。

 期待通りの活動が出来なかった組織を活性化させる事と、何も持たないが活動はしている組織をコラボさせてより活性化した組織運営ができないかと考えた行政担当者は、その構想を実現に対応してくれそうな施設の長に話を持っていきました。すでに実績のあった施設長は了解しそのための準備もしました。行政担当者は、既得権的になっていた業務委託先を公募とする為に上司だけでなく、議会を含めて納得させる長い苦労を経て福祉の為とできるだけのことはしました。ところが、蓋を開けてみるとなんと、新しい組織には組織としてちっとも協力してくれない大きな法人が受諾したのです。この法人の職員は新しい組織に積極的に関わり実績もあったのですが、組織からは支援されていませんでした。結局人事異動で協力的な職員はいなくなり、消極的な人材しか派遣してくれなかった大きく安定した組織を、小さくても頑張ろうとした施設長より、偉い人たちは選んだのです。福祉の歴史を見ても、組織より個人がより良いものを目指して牽引してきました。組織は、その功績に乗っかって安定した提供を保障してきたににすぎません。福祉はこれからも大きく変わらざるを得ません。その時も、組織ではなく、人と人材が大きく関与します。組織を変えることができるのも人材です。困難な課題があるからこそ、組織ではなく人に託さなければならないとして下から積み上げてきた企画は、行政の偉い人によって流され、長年の活性化というチャレンジのチャンスをつぶしてしまいました。