知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

眠剤はあるけれど睡眠は解明されていない話

    自然界では、弱肉強食で熾烈な戦いが行われていると説明されます。そして、命を守るために、自己防衛として様々な動物の対応を紹介することが映像でも行われ、なるほどと感心することが多くあります。しかし、考えて見ると、常時危険にさらされているから自然は様々な防衛機能を持たせていると説明しながら、実は、動物も睡眠という無防備な状態を自然はさせるのです。生まれたばかりの馬や動物の赤ちゃんが数時間後には親と共に走って逃げられる能力を与えながら、無防備な、睡眠をさせているのです。そして、無防備な、睡眠は何故必要かは全く解明されていないのです。それは、人間でも同じで、三分の一は寝ていると言われるのに、睡眠の理由は解明されていないのです。疲労回復だとか、脳内にはリンパ腺がないので、疲労物質を分解するためとか、神経節の配線整理をするためだとか、もっともらしい説明は沢山あるのですが、これだという論はないのです。同様に、睡眠中に見る夢についても、学者が持論を展開して、夢は記憶や学習、感情に関係している可能性があると言っても、 結局、夢を見る原理は解明されていません。いずれにしても脳の活動に関係すると言う事はわかっているのですが、人間の脳だけでなく、動物の脳の活動も実際は全く解明されていないのです。ですから、脳のどこの機能を停止させるという事の出来ない、全身麻酔薬では、脳全体を抑制することしか出来ないのです。その為に、麻酔薬が呼吸や心臓の動きまでも抑制してしまい、死亡したり、重篤な後遺症が残ったりするなどの副作用が出ています。つまり、脳の痛いという部分を制御する方法がないので、脳全体の活動を仮死状態にしてしまうと言うのが全身麻酔の基本なのです。全身麻酔薬は脳に広く分布するGABA受容体という神経細胞同士の働きに必要なタンパク質を無差別に、脳全体に抑制してしまうので、手術そのものの失敗よりも多く大きな問題となっているのです。

 そして、睡眠薬も基本的にはGABA受容体を抑制するだけなのです。だから睡眠薬による睡眠は脳全体を抑制してしまうやり方で、脳の一部が睡眠する本当の睡眠とは違うのです。通常の睡眠では、睡眠中でも脳の中でも、例えば耳は聞こえているとかの活動している部位と活動を弱めて睡眠している部位をちゃんと脳はコントロールしているのですが、どの部分にどうすれば良いかわからないから、脳全体の活動を停止させるような事を、睡眠薬はやるのです。つまり、本当の睡眠は、睡眠中も脳はさまざまな働きをしているのですが、睡眠薬では脳全体の働きを抑制して眠ったことにしているのです。だから、睡眠ではなく、意識停止をしているようなものなのです。その結果、原因も追及できていないのですから、副作用が出ないような睡眠薬は作れないのです。人間の意識は、脳の単一部分の働きではなく、脳の複数部分のネットワークのつながりによって成り立っていますから、自然の睡眠は、脳を部分的に睡眠させたり起動したりしていますから、睡眠中でも、排尿に起きるとか、体に触られたら起きるとか、声が聞こえるとかしますが、睡眠薬は電源オフと同じ事しか出来ませんから、沢山の副作用を起こしてしまうのです。例えば、成長ホルモン。子どもの時だけでなく疲労回復などにも必要で、人間以外の生物でも成長ホルモンは必要です。その成長ホルモンがなぜ睡眠時にしか分泌されなくなったのかも解明されていませんが、夜間や就寝中の副交感神経が優位なときに、成長ホルモンは分泌されるのです。つまり、普通の睡眠(特にノンレム睡眠)でないと、成長ホルモンは確保できないのです。まして、子どもが睡眠薬によって眠らされていると、必要な成長ホルモンなんて確保できずに、障害という副作用を背負わされるのです。睡眠剤と言う言い方から、自然睡眠と同じと考えると実は全く異質な意識停止が実情だと言う事がわかります。その為、最近は睡眠導入剤などと自然な睡眠に入る為の補助薬のように言っている場合もあります。でも、確かなことは、睡眠剤は脳の活動停止、意識の停止剤であって、脳の回復剤ではないことです。