知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

自立は、関係者の利害の話

 心地のいい言葉に自立があります。聞くだけなら素晴らしいひびきですが、それが強制されるということなら自立を求められた本人にはつらいことです。関係者は、自立は素晴らしいことで人間として当然であり自然なこととまで言い、自立は本人のためと力説しますが、実際には、自立のゴールが一体何なのかを説明することがありません。さらに、関係者は、本人には十分な自立の可能性があると強調しますが、その根拠は言葉ばかりで実態を説明することはありません。にもかかわらず、自立を奨められた本人は、関係者の期待に合わせた成長をしなければならないのです。ですから、自立とは何かを具体的に明示してどんな行動をしたらよいかを具体的に云っていただかないと本人には、ゴールが全く見えないのに進めとばかり言われることになるのです。例えば、働いて生活の出来る給与が得られていれば経済的自立だとすると、働いているのに給与が低くて生活に困窮している人は自立出来ていない人となってしまいます。社会的ポジションもありながら親が大好きで親と暮らしている人は精神的に自立していない人となります。と言うことをグダグダと考えていくと、少しでも他人に依存することがあると自立していないとされるわけで、究極には一人ぼっちで孤独な生活でもしていないと自立しているとは言えないなんてことにもなってしまうぐらい、自立と言う言葉は、現代社会では曖昧な言葉なのです。にもかかわらず、様々な場面で相手に説教するときに自立を目指せと言えば、済んでしまうような魔法の言葉でもあるのです。他にも、相手が出来ないことを延々と求める言葉に、勉強しろということもあります。何を一体どれほど勉強すればいいのかはとても不明です。この様な抽象的で後でどうにでも言い訳の出来る言葉は、本当の実態や実情を知らないか、知っていても解決すべき具体的内容を持たない人が発することが多いのです。福祉の世界では、障害があって出来ないから福祉サービスがあるのですが、実際は自立を目指さなければサービスを受けることは出来ないのです。

 現在の障がい者のための法律は、正式には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」で、略して「障害者総合支援法」というのですが、この法律を利用するには、計画相談という手続きで、サービス等利用計画の作成が必須ですし実施後はこの計画に基づいて、サービス等の利用状況の検証(モニタリング)も必須です。この必須条件の書類の記載事項には、本人のための長期目標、短期目標、解決すべき課題、支援目標、達成時期、課題解決のための本人の役割、評価時期、があるのです。もし、法律の理念通りなら、サービスの利用なのですから、利用に当たって、目標や課題解決や達成時期なんて全く必要などないはずです。普通の人でも、役所へ行って必要書類を受け取るサービスを受けとるために、目標設定などしませんし、コンビニに行って選んだ接客サービスの実施目標など書類に記載して許可を求めなければならないなんてことはありません。しかし、この支援法では、本人がサービスを購入するのだと説明しながら、そのサービスを購入して、課題を解決しなければならないとしているのです。つまり、支援サービスを購入して課題を克服して自立しなさいというのです。既に成人した方が、支援サービスを受けるためには、目標を立て、解決すべき課題を整理し、達成時期を計画し、課題解決のために自分がどうしたらいいかを考えて行動しているかが、時期的に評価されるというものなのです。法の目的が、自立を支援するものである生活保護ではこんな個別支援計画の策定や評価などはしていません。なのに、障がい者には、こんな条件を付けているのです。生活に必要なサービスなのですから、本人に条件を付けずに提供すればいいのです。むしろ、支援サービスを提供者に対して本人が、評価したものが必要だと思うのです。こんなことを求める根底には、障がい者への偏見があると思うのです。つまり、税金で、保護されているのだから本人も努力して頂くのは当たり前、常に目標を持って生活させる事が、成果効果を上げる事が必要であると考えているからこんなことになるのです。行政監査では、この個別支援目標とその記録や評価、そして課解決すべき課題のための関係者の会議まで記載されていないと指摘事項にされるほど重要な内容になっています。障害があると行政も認定しているのにその障がいの為のサービスを受けるには個別の目標を立てて努力しろというのは、少しでも出来るようになれという、自立の強制・強要だと思うのです。税金を無駄に使用していません。一生懸命努力していますという証明が必要と誰が思っているのでしょう。一体誰に向かって、長期・短期の目標を立てて頑張りますから、支援サービスを認めてくださいと言わなければならないのでしょう。本人がなりたくて持った障がいではありません。個別支援計画を支援するとして、サービス管理者を義務設置していますが、結局本人の欠点や短所、出来ないことの克服が努力目標とされています。税金で支援される以上は、一生大人になっても、目標を持って生きろと強制されているのが、現状です。その言い訳に、自立と言う言葉が使われているのです。障がいを持つ人には、目標のゴールもなく、努力目標設定であったとしても、いつになったらどこまでできたら、目標設定しなくてもサービスを受けられるようになるのか、明示しなければ障がい者自身が何に向かって努力せねばならないかさえ分からなくなります。障害福祉の特殊性は、長い人生に関与することと、成果・効果を計測できないということです。本来は、個別支援計画ではなく、個別支援サービス提供書が、事業所と職員に課せられるべきです。サービス商品としての支援内容を並べて選択していただきその商品を手渡すことが職員の仕事だと思うのです。今や指導訓練ではないのですから、どんなサービスをどれだけ提供するか計画を立て本人が承認し、本人が評価するのが原点なのに、関係者が本人を評価する体制が今も延々と続いているのが障がい者支援サービスの実態なのです。