知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

辞めないことに感謝する時代の人材育成の話

 障がい福祉の人材育成は、業務評価を含めた、スキルアップ、キャリアアップなどを

主軸として、福祉の理念、理論、技能方法向上を如何に成し遂げるかという研修プログラムが今も行われています。しかし、今日の障がい者福祉の現場においては、基礎部分さえ不明な方の就労が普通になってきました。つまり、福祉業界には異業種からの参入が増えて福祉関係者の常識は通じなくなってきました。さらに、過去に労働環境の悪さとして云われた「休日がなくて、ボランティア残業だらけで、給料が安い」もそれほど改善されていず、精神的にきつい状況に追い込まれるケースも多い現場であるということもあり福祉は特殊な職場と言う感覚も一般的に続いています。この様な変わらない労働環境をさらに悪化させているのは、社会的な人手不足で中間的な経験者の不足は事業運営に影を落とすまでになっています。その一方で、福祉業界への企業の進出は、新しいサービスを実施したり、特定のサービスに特化したりと、社会福祉法人が必要としてきた人材ではなく、福祉に拘らない人材によって対応しているという事か始まっています。今後も労働環境が厳しい状況は変わらず、人手不足が続く中、障がい福祉の人材育成が、今までの様な、スキルアップ、キャリアアップなど中心でいいのかと言う懸念があります。そもそも、福祉の業界は、福祉の理念なり理論から派生する「やりがい」に依存してきた感があります。福祉を理解さえすれば、「やりがいある仕事」なのだから、誰もがスキルアップ、キャリアアップを求めると考えてきました。そして、「やりがい」に依存して、労働環境の他業種との遅れを放置してきました。福祉なんだからこれぐらいは当たり前、障がいある人が困っているのだから仕方がないだろう方式で、職員の善意を引き出して依存してきました。つまり、職員の「やりがい」は職員の「善意」を引き出す手段になり、労働との関係を二の次としてきました。結果、現在では「やりがい」を感じる前に退職する一方、福祉の理念や理論が門前で嫌悪されてしまう事が往々にして起きています。なぜなら「福祉を理解すること」や「やりがいを感ずること」が、ボラ勤、長時間労働、低賃金の温床であったり、「障がい者のためなんだから」が自己犠牲もありうる労務環境を維持している現状があるからです。入職動機そのものが福祉に関心があるということ程度である職員に、キャリアアップやスキルアップと訴えても、研修を実施しても、本人が望まないポジションや業務への通過儀礼のようにとられ、時間になったら帰れる程度のキャリアで結構ですという状況も出てきています。そこには、福祉は特別な分野、精神的意識が必要な分野と思いこんでいる過去の感覚に囚われている管理・経営者に対して、福祉は対人サービスの一つにすぎないという意識に基づくキャリアがあれば十分と言う職員との意識の違いとなって広がっています。福祉の主たる役割は、生活であり日常性であることから、一定の技能水準が満たされれば、誰もが働くことが可能な職種であり、評価が標準化できず、個性が最も大事にされる職種で、働きかけ一つをとっても、標準化、マニュアル化に最もなじまない職種だからです。福祉の人材養成では、対象者への支援や介護の専門性を追求することに基本が置かれていますが、それを求めることが困難な人材をも活用しなければ現場が回らない時代に遭遇しています。数年で離職する、資格を取得したら転職する等の環境の中で、キャリアアップやスキルアップと訴えていても、離職を食い止めることに繋がるとは思えません。一方、民間企業の参入が可能となったことで、福祉のプロとは何かが問われています。これまでの理念的なことより、サービス提供機能が問われています。サービス提供のプロとは何かが今問われる時代に入りました。にもかかわらず、株式会社のサービスと福祉法人のサービスの違いを、差別化することでの意義付けをすべき作業も行うことなく社会福祉法人は、株式会社の悪口を述べる程度の対応しかせず安穏としています。それが、人材の育成にも大きな影響を与えています。サービスの具体的内容の水準・標準化された内容もありません。つまり、キャリアアップやスキルアップを叫びながら、その水準も、ゴールも設定されていないのです。だから辞めないことに感謝する時代に入ったのです。だからと言って、辞めないだけで感謝していても事業運営が出来るものではありません。福祉は人材頼みである事から従前とは違う人を育てる方法が求められていることに社会福祉法人は気が付くべきです。もう、誰も支援してくれない時代が来ていることに社会福祉法人は気が付かなければなりません。人事評価制度も、給与などへの反映を構築することが出来ず、結果として、職員のモチベーション維持が「福祉のやりがい」に転嫁され、人事評価は根拠さえ失って、利用者支援のサービス向上に繋がるはずやその職員の成長の手助けとなるなどは達成できていないのが現実です。福祉のプロとは何かを、支援プログラムの水準や基準を明示出来ない社会福祉法人は淘汰される時代が来ています。