知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

サビ管資格認定制度は、民間の趣味資格より安易だの話

 障害福祉サービスを提供する事業所には、サービス管理責任者を配置しなければならなくなりましたが、障害福祉のサービス管理責任者ほど、安易で酷い資格はありません。サービス管理責任者のことを略して、サビ管と呼ぶのですが、質は一切問われていません。資格を取得するには、決められた実務経験と資格認定の受講を受けるだけです。しかも受講内容は、講義とレクリェーションと見間違う演習しかなく、試験があるわけではありませんから、何も語らず、何も動かなくてもそこに存在さえしていれば認定されるのです。そんな資格は他にもあります。例えば、設置しなければならない防火管理者資格。講習を受講さえすれば取得できます。調理師資格、ラーメンしか作れなくても取得できます。それは、防火管理者は職場の防災のために必要な人材に防災の基礎を知ってもらい自覚していただきたいからですし、調理師は調理技術よりは食中毒により人に危害を加えないための衛生知識が重要だから、資格を与えることで認知させ底辺を広くしていくことを目標としているからでもあります。つまり、人命にも関わるこの様な資格は、取得を奨めて事故防止などの予防としての効果のために出来るだけ広く門戸を開けている資格です。しかし、障害福祉のサビ管の資格は、障害を有する人の人生を左右することもある業務なのに安易に民間の趣味の資格より簡単に取得できるというものなのです。障害福祉の現場では、業務内容のマニュアル化・標準化さえ国レベル、都道府県レベルで確立されていないだけでなく、業界としての支援水準も支援基準も示されてはいません。否定されている集団指導でさえ今のサビ管認定方式では出来ない程度のレベルなのに、求められる一人一人個別化した支援内容を計画し実施を管理監督することかできると人と受講さえすれば行政は認定してしまうのです。受講科目の構成も問題があるのですが、サビ管制度そのものにも問題があります。第1は、障がい利用者の個別支援の支援水準・支援基準がないことです。つまり、サービスの質や量の基準も示されないままに所定の障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として説明されますが、一体所定のサービスとは何かは、受講の中では理想ばかり語られて実務としての最低限の指針さえ明示されはしないのです。明示されるのは、せいぜい体罰の禁止等々の禁止事項程度で資格を得た職員が基礎的な実務には程遠い状態で帰ってきても、有資格者配置として加算されるのです。それほどサービス管理責任者は粗製乱造されているのです。第2は、実務経験です。社会福祉法人と言っても全体としての標準サービス指針もありませんから、支援サービスは法人によって実に様々です。つまり、対人サービスとは何かを理解している法人から、虐待とは何かさえ理解していないのではないかと思われる法人まであって、同数の経験年数であったとしても、実際の職員のレベルには雲泥の差があると言えるほど知識・理論・福祉観・人権意識・障がい者観に違いがあります。にもかかわらず、法人が推薦さえすれば、何ら基礎知識について学習する機会もなかった職員であっても、現場に学習体制もなく職員を放置していた法人であっても、受講でき有資格者となってしまうのです。第3は、サービス管理責任者が有資格者の上位に位置付けられているということです。現場経験年数といっても、学びの多い法人とほったらかしにされた法人が混合している今日の状況で、基準は経験年数だけですから、基礎知識を学んだこともない方でも受講しただけで資格を得ることが出来ます。しかし、福祉の現場には、社会福祉士介護福祉士や保育士等の国家資格者所有者も珍しくありません。つまり、少なくとも福祉の基礎を学んで試験に合格した有資格者の上位にサービス管理責任者として指揮を取ることが出来てしまうのです。一定の水準が確保された有資格と、水準など関係なく参加することで得られる資格が混在することはありますが、支援水準に関係ない資格者が現場では上位に立つということが既に起きています。福祉の現場では、全く関係ない職種にいた方がいきなり施設長になっても大丈夫な業界ではありますが、少なくとも、国家資格に準じた試験を課して一定の水準を確保しなければ、現場法人・施設間の著しい支援レベルの格差を追認するだけになっています。第4は、サービス管理責任者には、不正をしない限りその業務の質や中身で責任が問われることが無いということです。障がい者の人生に関わっているのに、支援計画の責任者なのに、その中身で責任を問われることが無いということです。一端資格を獲得すれば、支援の資質レベルに関しての管理責任を問われることもありません。どんなサービス管理をしていようと書類さえ確実に用意していればそれで十分なのです。本人の能力が低くても、その事業所のレベルが低くても、利用者の変化もつかめない、劣悪サービスでも管理者として営業することが出来ます。この様な状態は、福祉業界としてのレベル向上にはなんら寄与するところがありません。第5は、あたかも施設長の次のポジションのように言われ、利用者の個別支援計画の策定・評価、サービス提供のプロセス全体を管理するとされているのですが、人材育成権も、人事権もなく、サービス内容の質・量を確保するための管理権も予算処置も確保されていません。組織の中で、何ら権限を持たないポジションなのです。現場においては、施設長とどう関与するのかと言う課題も抱え、サービス管理責任者は、請求のための、記録事務係になっています。こんな状態ですから、法人によっては、 体罰禁止や人権確保さえ唱えていれば、働きかけをしない支援や見守りと言う言い訳や、自己選択と言う責任逃れもまかり通り、本人への学習チャンスを奪うような支援さえも容認される元凶ともなっています。現場の専門性のレベルは静かに低下しており、中間位の人材は不足し、職員の離職回転は徐々に加速されています。介護保険との違いが明確な障害福祉の現場にまだまだ介護保険の仕組みが亡霊のように現れて、民間の趣味資格より安易な資格でも設置義務などとしているのは無駄遣いとしか言えないと思うのです。