知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

障害者のみを対象にした初の国家公務員試験の障がい差別の話

 人事院は3月22日、障害者のみを対象にした初の国家公務員試験に754人が合格したと発表しました。本人が辞退しない限り、全員を中央省庁や出先機関の常勤職員として雇用するという事ですが、この試験そのものが、省庁の障害者雇用水増し問題を受けて実施されたものなのに、実態は知的障害者足切りをするという差別その物だったのです。なぜかというと、受験資格は、障がい者を証明する障害の手帳を所持していなければならず、試験は、第一次の筆記試験と第二次面接なのですが、第一次の試験が「高卒程度の知識を問う形式」の筆記試験だったからです。高校卒業程度の、知的障害者は殆どいません。何故なら、高卒程度の知的能力を持つ人が、知的障害者を証明する療育手帳を取得出来るかどうかは、かなり難しい判断になりますし、知的障害者療育手帳を取得している人は、高卒程度の知識を障がいによって学習できない事に起因して特別支援の教育を受けています。さらに言うと、特別支援学校の高等部は、高校ではありませんから、高卒の資格は取れません。ですから、この段階で知的障がい者は除外されたのと同様な待遇を受けたと言えます。その証拠に、合格者の、持っている障害の手帳別の結果は、身体障害者319人(42.3%)精神障害者432人(57.3%)、知的障害者3人(0、4%)という状態を見れば明確です。知的障がい者は、知識における障がいですから知識を選考基準に据えられてしまう事は知的障がい者を門前払いをしていることと同じで、中央省庁での障害者雇用の国家公務員統一試験と言いながら国自身が知識という内容で、差別して、門戸を提供していないという事です。この背景を推測すると、公務員の定員枠内に障がい者を入れたくないという意志がくみ取れます。定数枠では、障がい者が一人前の仕事をしなければ、他の職員が業務を行わなければならないということになり、定員減と同じになると言う考えがあるからです。だから、障がい者雇用枠は、公務員の職場に加配職員として配置される非常勤でカウントしたいという本音があって正規職員枠は、仕事が出来る人にしてほしいという明確な意志があるからです。もっとハッキリ言うと、員数外職員でなら障がい者雇用をしても良いけれど、正規となるとそれは困ると言う事がここから見えるのです。人事院は「知的障害者には通過が難しい試験になる」と認めたうえで、今回の統一選考試験とは別に各省庁が実施する個別の採用を通して対応する考えと言っている中身は、法定雇用率遵守のためだけに、非常勤雇用をするから正規職員には、知的障がい者を入れる気はないと国が言っているのと同じなのです。

 試験内容は、公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)、基礎知識(高卒程度の

知識を問う)で、知能分野15題、知識分野15題、と文章による表現力、課題に対する理解力などについての作文の2つから構成されていると言うことです。そもそも公務員として必要な基礎的な能力が、知能と知識である事からすれば、知的障害者は受験資格すらないにも等しいことです。さらに、仕事内容が各省庁の一般的な行政事務を担うことが前提となっていると言うことも高いバリヤー以外の何ものでもありません。厚労省は、身体も精神も知的も障がいは一緒だと法的にも三障がいを合体させています。その意味で人事院が、「障害者枠」と銘打って公務員を募集するのに、知的障がい者が受からないようなバリヤーを張って何ら、「合理的配慮」をしないことは、差別以外の何ものでもありません。

 国のやり方は、一般の企業の手本となりますから、正規職員は雇用しなくて良い。非常勤で良いと言っていることと同じですし、職場が必要としている能力で試験による差別をして良いと言っていることと同じです。元々、障がい者雇用は、雇用主にとっては雇いたくても適切な仕事が無いから雇用していないという事情があります。それに対して、法定雇用率では、雇用の工夫を求めています。健常者の目線だけで考えているといつまでたっても障がい者は事業活動に組み込むことは困難なので、障害があっても働ける環境を考えて行こうと言うことに尽きます。この考え方からすれば、国は、障がい者が活躍できる場、働ける場を作ろうとしていないと言う事です。パラリンピックに出られるような人ばかりを集めて雇用しようと言う事です。第一、就労というのは、合格は通過点で、その後の長い道のりは、平坦ではないのです。入り口から差別意識丸出しの障がい者枠て合格し公務員として晴れやかに就業した人が、公務員という村社会の中で差別を受けずに仕事を習得できるのか、1年後に何人が継続していられるか心配になります。何故なら、障がい者の権利や差別禁止をにも反した、差別意識を隠したずるをしても法律で定められた障害者雇用率2.5%達成には、4千人程度足りないのですから、後から採用される障がい者にとって「よかった」と思える道筋が形成されていくのか心配だからです。