知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

不老長寿の先にあるものの話

 クマ虫の仲間は、地球上で最もタフな生物と言われており、1000種以上あります。体長1.7ミリ程度で、海洋・陸水・陸上のほとんどありとあらゆる環境に生息し、水がなくても120年は生き、宇宙空間に直接さらされても10日間生存することが可能と言われ、150度の高温、マイナス200度の低温、真空、高圧、乾燥などの、極限の環境でも生きているとされています。でも、そんなクマムシでも不老長寿ではなく世代交代をしています。人間は長生きしようとあがき続け、様々な健康食品を作り出し、様々なものを口にしてきました。今となっては、有毒とされる水銀までも飲んでいます。そんな貪欲の結果として、人間の食物は、多様になりました。今は地産地消が新しい何かのように言われますが、食物が地域移動するのは近年のことで、地産地消ということよりも地にある物しかないということが貧富の差や国の興亡に影響していました。物流の発達としての道路整備や輸送手段としてのエンジンやモーターの発明、乾物・干物から、冷凍・冷蔵の発展という保存方法の変化、それらの上に立つ調理方法や調理器具の発展に続く、加工食品の技能や添加物の利用が、食生活の多様性と複雑化を進めました。サプリ等という健康食品などと言うものまで販売されています。他方、疾病に関しては、難病を含めてまだまだ奧は深いのですが、なんとなく進歩していくのだろうし甘い期待と自分ではどうにもならないからの他力本願で関心は高くありません。しかし、毎食直面する食に関しては不老長寿の食を求めて、健康食品を求めて高い関心を示します。ですが、現代ほど雑食が進んだ時代はありません。生物は、身体維持機能やエネルギー補給のために、摂食活動を行いますが、多くの場合は対象の食物は特定されていて、人間ほど雑食化しているのは特別です。その貪欲な雑食が現代では、科学とタイアップして肥料や農薬を作り、自然には存在しないものまで摂取するようになりました。その為、地球規模での化学汚染と言われる今日、無農薬、有機栽培などと言っても、大陸から風に乗って様々な化学物質が降り注いでおり、それは気分の問題程度にしかなっていません。それでも、身体機能を長持ちさせるには、何らかの物質補給しかありませんから今も次々と新商品が出されています。

 しかし、クマムシでさえいつかは死んでいるのですから不老長寿の単体物質が地球上にはあり得ないと考えるべきです。そうなると、長生きするには、常に新陳代謝により再生されている一つ一つの細胞の寿命を長持ちさせるか、千年生きる細胞を見出すかということになってくると思うのです。つまり、死なない細胞は生命体として不可能ですから、長持ちする細胞を如何に作り出すかとか、細胞の交代があっても使用後の再生にならないようにするとかだと思うのです。細胞自身は、どんなに活性化しても老化しますし、劣化します。問題なのはなぜ細胞は、再生に当たって劣化した細胞をコピーするかという事です。現状では、再生される細胞は、体験経験が蓄積された細胞で、時間を遡って再生してくれないということです。例えば、脳細胞なら記憶を含めて次の細胞に複写して新しい細胞に乗り換えるのですが、古い細胞の劣化もコピーしてしまうのです。もし、細胞が自分が新しく再生されたときと同じもので再生されるなら、赤ちゃんの肌が繰り返し再生されるはずです。しかし、現実には、その細胞の経験や使用度が再生される原本となるから劣化としての老化は進んでいくのです。では、身体機能の細胞の再生を10代のコピーに限定できる技術が出来たとして考えると、脳の経験値もコピーされませんから、人生も振出しえ戻るということになってしまいます。脳だけは経験値でコピーしたのなら、脳と体のバランスは確実に失い脳は、自分を失うかもしれません。こんなことを考えると、不老長寿の先にあるのは、生命をどうしたらいいのかという疑問だけになってしまうと思うのです。生命は、劣化して老化と終末を受け入れることが自然だと認識することが、疑問を解く鍵になると思うのです。