知ったかぶりの話し

知ってるつもりの思い込みの感覚に、非常識な横やりを入れて覧る試みです

縦割り行政が分かりやすい事例の話

    厚労省は、2005年「次世代育成支援対策推進法」の施行により、労働時間の短縮や子育て支援などに取り組む企業に「くるみん」マークという認定マークを与え自社企業の広告などに働きやすさをアピールしても良いとしています。そして、厚労省は、91年に新任職員の過労自殺死があり係争となって2000年には最高裁判決で敗訴している電通と言う日本の大手広告会社に、この「くるみん」マークの認定をしているのです。電通は、日本で初めて過労死を最高裁が認めたと言う会社ですから、過労死などの責任を認めないで最高裁まで争い続けた会社で自説を曲げない会社です。その結果、13年には30代男性社員の過労死が再び発生しているのです。にもかかわらず、過労死があった13年も「くるみん」マークが認定されているのです。そして、再び、電通の新人女性社員が過労死自殺となり、東京労働局の強制調査が全国の同社に行われましたがそれでも「くるみん」マーク保持企業なのです。労基署は、前年にも労基法違反で行政指導の是正勧告をしていることも明らかになりましたから、これは俗に言うブラック企業じゃ無いのと言う体質ですが、厚労省は、働きやすい職場だと認定していて、この事態になって、認定取り消しと言えず撤回の検討に入ったと行って実態は、電通からの辞退を待っていると言う事なのです。

 厚労省は、電通に対して怒って騙された酷い会社だと自ら撤回すれば良いのですが、撤回となると認定した責任が問われるので、ひたすら電通の方から辞退してくれるように待ちに入ったのです。結果として11月1日に電通より辞退の申し出がでて、厚生労働省は異例の早さで待ってましたと「承認」した上でホームページでも辞退を承認し認定が失効しましたと広報しました。くるみんマークそのものはみんなが余り知らないマークでクイズに出てきたらへぇ-と言ってしまいそうな事なのですが、ことし9月末の時点で全国で2657社が認定されているということです。そんなに働きやすい会社があったのかと驚く数字ですが、厚生労働省はちゃんと調査して認定しているのか誰もが疑いたくなります。それに対して、厚生労働省は「企業の子育て支援の取り組みを促進したい思いでやってきたが、今回の電通の承認失効は残念でならない。真に取り組んでいる企業に対してきちんと認定が出せるような仕組みにしていきたい」とコメントしているように仕組みが元々ちゃんと出来ていないことを認めています。しかも、電通の承認失効は残念でならないと言っていますが、残念の対象は厚労省を信じて電通に就職した人や就職しようとしている人への謝罪では無いのです。国の機関としてのお墨付きが間違っていたというのに、自ら切り捨てることもせず、願い出てきたので承認してやったとまるで時代劇の代官と越後屋のような対応で、庶民には謝罪もせず、間違いも認めないのです。この失敗は、東京労働基準局が、強制調査するというほど、前々から継続した問題あり企業としてマークしていたことを全く共有していなかったと言う事につきます。しかも労働基準監督署というのは、厚生労働省の管轄の組織です。常識的に考えるなら、くるみんを承認するときに、日常的に労働状況を監視している同一組織の労基にちょっと確認してくれないと名簿を渡せば簡単に評価できることだと思うのです。なのに、決して横の関係に書類を回してチェックすることはしないのです。つまり、こんな事が縦割りとして日常的に行われているというのが行政なのです。同じ厚生労働省の中でさえこんな状態ですから、他の省庁間では縄張り争いでとても横の連絡など取れません。その中で、実際、女性社員の自殺が過労による労災と認定され、東京都労働局などは強制調査にも着手し、法令違反を確認したなら行政指導する方針と言いますが、電通は、越後屋以上に、メディアにも大きな影響力を持ち、敵に回せば広告減少という報復をされかねずテレビの報道番組もひっそりと流れたように、厚労省の他の部局から声が掛かれば労働局の刃はさび付いて抜けないなんてことにもなりそうです。「労働時間の短縮」が看板のくるみんで、過労死させる企業を認定して、企業広告に使用させた責任なんて絶対に取らないだけで無く、自分の組織の横の関係が無かったことがチェックミスとなった原因だとも思わないのが縦割り行政なのです。